病院の窓
医療制度近代化への提案
須川 豊
1,2,3
1神奈川県立こども医療センター
2神奈川県立栄養短大学
3日本学術会
pp.17
発行日 1977年10月1日
Published Date 1977/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206343
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本誌8月号の本欄に,島内先生が「医療と診療」について書いておられる.医療法や医師法に「診療録」という言葉が残っているのは,単に言葉の問題だけでなく,制度的な思想が旧態のままであることの一例である.病院と診療所の機能分担は明確でないし,医療機関の階層化は制度的に定められていない.極端ないい方をすれば,診療所も大学病院も同じようなことをやろうとしている.
近頃やかましい救急医療を考えてみると,まず医療の供給責任が明らかでない.国,地方公共団体も医療機関も制度的な責任はない.患者の要求は時間外診療であって,医療側のみる緊急医療ではないから,ある病院が先発して時間外体制をとれば,軽症も重症も殺到して責任の持てる医療は行えない.医療事故がやかましいので,医師は専門外の患者はみない.労務問題も大変で,関係者の善意だけでは救急医療体制はとれない.学識者にうかがうと,医療制度の非近代的であることは認めるが,その改正は困難で,むしろ不可能だとのお答えである.しかし,新医療費体系から始まって,社会保険制度の抜本改正が叫ばれて久しい.真面目な医療担当者の苦悩と国民の医療に対する雑多な要求,患者の医師不信などを考えると,医療制度の近代化は国家的緊急事である.
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