Japanese
English
研究と報告
精神病院医療についての提案
A Proposal on the Psychiatric Hospital Care
中村 五郎
1
Goro Nakamura
1
1京都府立洛南病院
1Public Kyoto Rakunan Hospital
pp.321-326
発行日 1970年4月15日
Published Date 1970/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201602
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに
向精神薬が出現したことは,われわれ精神科医を大いに勇気づけたが,その影響は単なる薬物療法の域を超えて精神病院そのものの在り方をすら,大きく変革するに及んだ。その後,薬物の限界が次第に明らかとなりながらも,他に代る有効な治療法の見出せないまま現在に至っている。大概の患者は,在院も非常に長く,治療の可能性は限られ,それにつれ生活上のさまざまな問題が介入するため病院精神科医は,患者生活やその環境も考慮しなければならない。
K. Jaspersは「精神病理学総論」の終りの方で「狭義の精神病者の大多数には,本当に合理的な治療は未だ到達できない目標にとどまり,できることは,可能な範囲の治療を伴う監置と看護とで,患者と社会を保護することである」と述べているが,熱狂的な薬物信仰への夢が消え去った現在,今一度,謙虚な気持で,この言葉に耳を傾ける必要があると思う。
Copyright © 1970, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.