臨床外科交見室
「腹腔鏡下手術」の大流行に思う
丸田 宥吉
1
1新潟市民病院
pp.508
発行日 1995年4月20日
Published Date 1995/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407905194
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世を挙げて腹腔鏡下手術が大流行である.外科に関連する学会には必ずといってよいほど腹腔鏡下手術が主題に取り上げられているし,雑誌でも頻繁に特集が組まれている.いつの時代でも「はやりすたり」があるもので,手術に関しても,一時大流行した手術がいつの間にか忘れ去られてしまうことがあり,なかには痔核に対するホワイトヘッド手術のように,有害な悪い手術とのレッテルを張られることさえある.一方,長い年月の間,標準術式として生き残るものもある.腹腔鏡下手術は果たしてどの道を辿るのであろうか,興味深いものがある.
日本で最初に腹腔鏡下手術の対象になったのは胆嚢摘除術だと思うが,当院でも平成4年3月30日に第1例を施行してから170例を超えた.最初は3時間近い時間を要したが,今では40分から1時間以内で済むようになった.これといった合併症もなく,教科書的には認識している「遺残胆嚢管症候群」も35年間の臨床経験で一度もお目にかかっていないので,あまり問題にならないだろう.これより以前には皮切5cm以下のミニラパロトミーで施行していたが,所要時間もほとんど同じで,今では腹腔鏡下手術にとって代わった.手術点数は開腹手術で10,800点,腹腔鏡下手術で16,300点と差があるが,開腹手術のほうが3〜4日退院が遅れるので,患者の負担はほぼ同額となる.
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