特集 外科医に求められる緩和医療プラクティス
外科医と緩和医療—何が求められているか
柳田 邦男
Kunio YANAGIDA
pp.1079-1082
発行日 2000年9月20日
Published Date 2000/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407904189
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低い緩和ケアへの関心度
20歳代から30歳代はじめくらいの若手の医師に出会うと,私は時折,「がん患者の終末期医療に関心がありますか」と尋ねる.「末期患者のターミナルケアの経験はありますか」と聞くこともある.返答はだいたい決まっている.「いやあ,まだそんなことはできません」とか,「死が近い患者をみるなんて難しくてできませんよ」「緩和ケアの方法はまだ習ってませんから」といった言葉が返ってくるのである.
その度に,私は不思議なような寂しいような思いにとらわれる.日本人でがんで死ぬ人は,1年間に30万人に近づこうとしている.緩和ケア病棟で最後の日々を送れる人は,ごくわずかである.大部分の人々は,一般病棟で死を迎える.がんが進行すれば,かなりの率で痛みやだるさ,嘔気,便秘,呼吸困難,不快感などの身体症状に加えて,不安,抑うつなどの精神症状に悩まされる.患者にしてみれば,手術や薬や放射線で懸命に治療にあたってくれた医師が,引き続きそうした苦痛や苦悩のケアをしてくれるものと期待する.だが現実には,医師は治療の時ほどには,患者に熱意を見せなくなる.それは,医師の年齢にはあまり関係がないようにみえる.まして若手の医師になると,どう対処してよいかわからないという傾向が強くなるのは当然だろう.
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