特集 薬物療法マニュアル
Ⅶ.併存病態の理解と薬物療法
4.消化器疾患
逆流性食道炎
北川 雄光
1
,
安藤 暢敏
1
,
小澤 壯治
1
,
北島 政樹
1
Yuko KITAGAWA
1
1慶應義塾大学医学部外科
pp.434-436
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903910
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はじめに
逆流性食道炎は消化液が食道内に逆流し,これが頻回に起こるか,あるいは長時間食道内に停滞することにより食道粘膜の傷害が発生する病態である.欧米に比べて本邦においては頻度も低く,軽症例が多いと言われているが,近年増加傾向にある.従来からその原因として食道裂孔ヘルニア,肥満,慢性咳嗽性疾患などによる腹圧の上昇と,それによるlower esophageal sphincter (LES)の機能不全が指摘されているが,最近では一過性LES弛緩(transient LES relaxation)が胃食道逆流(gastroesophageal reflux:GER)の主因であることが明らかになってきた1).健常者にも認められるGERがいかにして逆流性食道炎に発展するのか,その成因,病態において未だ不明な部分も多いが,24時間pHモニタリングや食道内圧測定などの機能的診断法の進歩がそのメカニズムや病態の解明に寄与してきている.本疾患に関してはHelicobacter pyloriとの関連,ロサンゼルス分類をはじめとする分類法の臨床的有用性,食道腺癌発生との関連など現在でも議論の多い問題が残されている.そして,本稿の主題である治療戦略についても,内科的治療VS外科的治療という構図のなかで,近年それぞれに新しい展開がみられたのは周知の事実である.
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