特集 薬物療法マニュアル
Ⅵ.感染症の薬物療法
2.全身的感染症
MRSA感染症
石川 啓
1
Hiroshi ISHIKAWA
1
1佐世保市立総合病院外科
pp.356-358
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903882
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基本的な事項
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症は院内感染として感染防御能の低下した易感染性宿主に感染しやすく,また多剤耐性を示すため難治性となり重篤な感染症を引き起こす.わが国においては1980年代の後半からMRSA感染症の報告が散見されるようになり,過大ともいえるマスコミ報道によりパニックに近い社会問題となったのは記憶に新しい.それから10年の月日が経過し,MRSA感染症を引き起こすメカニズムが解明され,感染者に対する対応や感染予防に関する知識の啓蒙とともに,有効な抗菌剤の開発と臨床応用によって現在ではMRSA感染症が社会問題となることは少ないようであるが,一方ではバンコマイシン耐性のMRSAも報告されており1),ここらで再認識をする必要性を感じる.
現在大病院での細菌検査で臨床材料から分離される黄色ブドウ球菌のうち,約60%がMRSAであると報告されている.黄色ブドウ球菌はヒトの皮膚,鼻腔,口腔,腸管内に常在する菌であり,MRSAも黄色ブドウ球菌と同様で,ただ多剤耐性であることのみが異なっており,その病原性は黄色ブドウ球菌より強いものではなく,同等かむしろ弱いとされている.
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