特集 薬物療法マニュアル
Ⅲ.周術期の薬物療法
2.緊急手術
ヘルニア嵌頓
清水 忠夫
1
Tadao SHIMIZU
1
1東京女子医科大学附属第二病院外科
pp.185-186
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903820
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はじめに
ヘルニア内容がヘルニア嚢の狭小部(多くはヘルニア門)で絞扼されて非還納性となり,その脱出臓器の血行障害を伴うものをヘルニア嵌頓または嵌頓性ヘルニアという.臨床上非還納性のものをすべてヘルニア嵌頓と呼ぶことが多いが,区別されるべきである.日常診療でよくみられ,嵌頓をきたすことのあるヘルニアは鼠径ヘルニア,大腿ヘルニア,腹壁瘢痕ヘルニア,臍ヘルニアなどである.また,閉鎖孔ヘルニアは稀な疾患であるが嵌頓を起こしやすく,術前診断が困難なことが多いので注意を要する.
ヘルニア嵌頓はヘルニアの合併症中最もしばしばみられ,かつ重篤である.この状態が解除されないと脱出臓器は短時間のうちに壊死に陥ることとなる.したがって診断の遅れが致命傷となることもあり,急性腹症をみたら必ず念頭に置かなければならい.特に,高齢者に多く,嵌頓をきたしやすい大腿ヘルニアの診察にあたっては,身体所見をとる際に診察の範囲が腹部にとどまると見逃すことになるので十分注意を要する.
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