臨床外科交見室
成人鼠径ヘルニアに対するNyhus分類について
山本 俊二
1
1神鋼病院外科
pp.214-215
発行日 1999年2月20日
Published Date 1999/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903526
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従来,鼠径ヘルニアは,ヘルニア門の解剖学的位置により,外鼠径ヘルニア・内鼠径ヘルニア・大腿ヘルニアに分類され,また,発生原因から小児鼠径ヘルニアと成人鼠径ヘルニアとに分類されるが(表1),近年,Nyhus分類1)(表2)が用いられるようになってきている.このNyhus分類では,成人の外鼠径ヘルニァをType 2とType 3Bとに分類しているのが特徴であるが,はたしてこのように分けることは意味があるのだろうか.
Type 2は,内鼠径輪の開大があるが,鼠径管後壁が正常な外鼠径ヘルニアであり,メッシュによる後壁補強は必要ないとしている1).たしかに,鼠径管後壁が正常であれば,補強は必要ないといえるが,術前はもちろん,手術中にも鼠径管後壁の脆弱性を判定することは困難である.Nyhus自身は,ヘルニア嚢内に挿入した指で,鼠径管後壁の脆弱性を判定しているが1),この判定方法は不正確である.実際,鼠径管後壁の脆弱性の判定の誤りにより,3.3%の内鼠径ヘルニア型の再発があるという2).また,Type 3Bは陰嚢まで達する外鼠径ヘルニアであり,Type 2は鼠径管内全体を占めるような外鼠径ヘルニアであるとしているが,われわれの経験では,鼠径管内全体を占めるようなヘルニアでは,鼠径管後壁の脆弱を認めるものが大部分である.
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