メディカルエッセー 『航跡』・27
チーフレジデント物語—ニッポンの常識はアメリカの非常識
木村 健
1
1アイオワ大学医学部外科
pp.1470-1471
発行日 1998年11月20日
Published Date 1998/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903447
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小児外科の外来は,オフィスと称するフィッシャー教授診外来と,単にクリニックと呼ぶレジデント診外来に分かれていた.教授診は,1人15分の予約時間を買うことのできる裕福な患者を自身のオフィスで教授が診るクリニックである.厚いカーペットを敷きつめたオフィスには両親用のクラシックな椅子と,幼い患者用の小さな椅子が用意されている.1860年にロンドンで誂えたというマホガニーのデスクに座った教授とむかい合って直に訴えをきいてもらうというセットアップである.横のドアを開けると別室に診察台がある.教授は診察を終えると直ちに秘書に口述記録を速記で書きとらせ,クリニックが終わるまでにはタイプに打ち上った診療記録(カルテの記事)がデスクの上でサインを待っているという仕組みであった.教授は毎火曜日の午後,2時間余りの外来で10人しか診ない.新患の10中9人までが手術患者で,翌週の手術予定に組み込まれる.海外や他州からの患者は市内のホテルに滞在して翌週の手術日までを過ごすのであった.
一方,レジデント外来は教授のオフィスと同じ建物の1階にあって,各科が時間帯を決めて共同で使っていた.床はリノリウム,患者さまもレジデントも質素な椅子に腰掛けての診察は,教授オフィスでの診察と大変な違いである.週2回レジデント診にあてられた火,木の午後,手術の合間に10人程の患者を診るのが外来であった.
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