巻頭言
常識と非常識
木下 安弘
1
1千葉大学保健管理センター
pp.963
発行日 1980年9月15日
Published Date 1980/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404203623
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1628年,William Harveyは世に名高いExercitatio Anatomica de Motu Cordis et Sanguinis in Anima—libusを著わし,血液の循環運動を明らかにしたが,その反面,Harvey以前の,または当時の医学生物学者がこの問題をどう考えていたかという疑問は,他山の石としてあってよいであろう。Harveyに至るまでの医学の歴史の中で神とたたえられた——というのはHarveyが自著のはじめに「たとい昔から至上とされているものであっても,その誤りを正していかがわしい人物と思われることはない」と書いているように—ガレノス(Galen)は動静脈の解剖学的差異と機能差をよく知っており,例えば動脈止血のさいには血管の心臓側を結紮するとよいといっていることから,動脈血流と静脈血流の方向をかなりはっきり見ていたといわれる。また,小動脈と小静脈間に吻合があり,血液が一方から他へと通過して行くのを知っていた。
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