メディカルエッセー 『航跡』・26
チーフレジデント物語—チーフレジデントは科の要なり
木村 健
1
1アイオワ大学医学部外科
pp.1310-1311
発行日 1998年10月20日
Published Date 1998/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903307
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毎朝6時半には家を出てボストン南部の海岸沿いに走る3Aと呼ぶローカル道路を北進する.右手には長い砂浜のウォールストンビーチが広がり,はるか霞の彼方にボストン市街の高層ビルが浮かび上ってくる.128号線に乗ってさらに北上すると,毎朝のことながら,片道4車線のハイウェーはまるで無限に続く長大な駐車場の様相を呈する.市内に向かう車でぎっちり埋めつくされ,にっちもさっちも行かない.ボストン名物の朝の渋滞である.ボストン市内で高速道路を降りた車は狭くて迷路のごとき道路に阻まれて動きがとれない.その上誇り高きボストニアンは信号が赤であろうと青であろうと,われ関せずどんどん横切るから,仕方なしに車のほうが停まって人を先に行かせる.わずか1マイルの道程を30分かかって小児病院の駐車場にたどりつくと,さすが早朝だけあってまだ車は少ない.駐車場といっても舗装もない只の空地.2週間前,病院の検査技師がホールドアップに遭い,有り金残らずまき上げられたという物騒なスポットである.
小児外科レジデントのチームは,7時に新生児ICUから始めて,1時間かけて全患者を回診したのち,8時から手術を開始する.手術日は月曜から金曜日までの5日間.当時の記録を見ると1年間に800例余りの手術をしているから,週に16例として日になおすと3例強平均である.
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