私の工夫—手術・処置・手順・42
気胸を起こしにくい鎖骨下静脈穿刺の工夫—左手親指で作り出すpuncture windowについて
下間 正隆
1
Masataka SHIMOTSUMA
1
1舞鶴赤十字病院外科
pp.596-597
発行日 1998年5月20日
Published Date 1998/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903178
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鎖骨下静脈穿刺時に,稀に気胸を引き起こしてしまうことがある.胸膜が鎖骨下静脈の数ミリ後方に存在するため,穿刺角度によっては,胸膜を誤穿刺してしまうためである.なぜ胸膜を誤穿刺してしまうのか? それは穿刺針が患者背面に対して斜めに刺入されるからである.針を患者背面に対してできるだけ平行に進めれば,胸膜誤穿刺の危険性は減少する1,2).それには,皮膚穿刺時点での穿刺針の方向が重要である.
鎖骨下静脈は腕頭静脈から分岐した後,鎖骨と第一肋骨との間を通って,鎖骨下を腋窩方向へ走行する.したがって,仰臥位の患者の側面に立って鎖骨下静脈を穿刺するときには,鎖骨下縁と第一肋間との間隙を走行する鎖骨下静脈領域を穿刺することになる.私は皮膚の上からみてこの領域にpuncture win—dowと名付けた穿刺面を想定している.この穿刺面にできるだけ直角方向に針を刺入すれば,針は患者背面に対して平行に進む.この穿刺において,私は外科手技全般において基本的に大切とされる「左手(利き手でない手)」の使い方が重要であると考える3,4).すなわち右鎖骨下静脈穿刺において,鎖骨下の皮膚を左手親指の指腹でできるだけ深く凹ませて,皮膚上にpuncture windowを作り,この底面を皮膚穿刺部位とする(図).そうすれば,皮膚穿刺の時点から針を患者背面に対して平行に進めることができる.
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