メディカルエッセー 『航跡』・21
専門医たるもの,他と別格に扱われるべし
木村 健
1
1アイオワ大学医学部外科
pp.598-599
発行日 1998年5月20日
Published Date 1998/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903179
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1970年代の終わりから1980年にかけて,ニッポンの各学会で専門医制度委員会が設けられ,学会として専門医を認定する方向に動きはじめた.近代医学が導入されて百年に及ぶ日本医学史の中で,これは画期的なことであった.それまでは「医者の上に医者を造らず,医者の下にも医者を造らず」という日本医師会の方針に逆らわねという弱腰の政府は,勉強としての制度の検討すらおぼつかぬ状況であった.
その頃,わたしの専門の小児外科は,先達の大変な苦労が実を結び,外科や内科と並ぶ標榜科となった.それまで外科の一隅を占めるにすぎなかった小児外科が独立した科として政府に認められたのだから,小児外科医一同の喜びはひとしおであった.標榜科になる前には,小児病院の診療科目を表示する看板に「小児外科」と表記することは許されず,単に「外科」と書くしかなかった.以前勤めた小児病院では門前を通る人達の間に,「あれ,あそこの病院ではうちの父ちゃんの痔も切ってくれるのかしら,“外科”と書いてあって“こどもの外科”とは書いてなかったわよ」という笑い話が流行ったほどである.
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