特集 からだのメカニズムから看護技術を見直そう
採血の時「親指を中にして握ってください」に意味はあるの?
菱沼 典子
1
,
平松 則子
2
1聖路加看護大学
2健和会臨床看護学研究所
pp.27-31
発行日 2006年1月1日
Published Date 2006/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100003
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はじめに
採血のために静脈に針を刺入する際に,「親指を中にして手を握ってください」と言うように先輩から教えられて,そのようにしてきた.確かに,前腕部の筋肉が収縮するのを感じるが,母指を中に入れないで手を握るのと違いがあるのだろうか.ある時患者さんに,母指を中に入れなくてはいけないのかと問われ,答えられなかった.そもそもなぜ手を握ってもらうのだろうか.意識がない場合や,麻痺がある場合など手を握ってもらわないで採血した経験だってあるというわけで,手を握ると何が起こるのか,親指を中に入れるのと入れない場合との違いは何かを探ってみることにした.
ちなみに『根拠から学ぶ基礎看護技術』は,「これは,前腕部の筋肉を収縮させ,さらに末梢部からの静脈血還流量を促進させることにより,静脈の怒張がより強くなるためです」1)と説明してある.『安全・確実に行なうための最新注射・輸液マニュアル』では,「母指を中にして手を握っていただく(クレンチング)と静脈が怒張しやすい」2)と説明している.
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