臨床外科交見室
胆嚢手術法の変遷史瞥見
佐藤 裕
1,2
1福岡赤十字病院外科
2日本医史学会
pp.591-592
発行日 1998年5月20日
Published Date 1998/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903175
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臨床外科52巻13号に掲載された佐々木克典氏の論文(外科医のための局所解剖学序説;腹部の構造,4)で,肝胆膵領域を専門とする外科医にとって気になる記述があったので,外科学史の立場から,意見を述べさせてきただきます.
まず「Calot's triangle」であるが,これはCalotが1890年に卒業論文として発表した「De la Cholecystectomie」のなかで,「cysto-hepatic angle」と命名したことに端を発する冠名であり,Calotは胆嚢摘出の際に胆管損傷を避けるためにこのような「三角形の領域」を想定したのである.Jean Francois Calotは1861年生まれで,1890年にパリ大学を卒業した.卒業後はほとんど消化器外科に手を染めることなく,もっぱら当時難病であった脊椎カリエス[Pott病;その病態解明と治療に貢献した英国の医家Per-civall Pott(1714-1789)を記念した冠名]の治療に取り組み,中央の医学界に出ることなく,1944年に南仏の片田舎で83歳で生涯を終えた.
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