外科医のための局所解剖学序説・18
腹部の構造 5
佐々木 克典
1
Katsunori SASAKI
1
1山形大学医学部解剖学第1講座
pp.77-86
発行日 1998年1月20日
Published Date 1998/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903084
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最近の研究のスタイルは多数の人間がシステマティックに行うのが主流で,大きな効果をあげている.しかし真に独自の研究がなされる時は1人の人間の強い個性と飽く無き情熱が主体となり,多人数で成されるものからは生まれにくい.1人の人間ができることなどはたかが知れていると広言して憚らない人もいるが,私はそうは思わない.プリオン説を唱えたPrusinerは徹底的な批判にさらされながら自説を曲げず,今回ノーベル賞を受賞した.その人柄をある人は“非常に攻撃的,活動的な人だ”と寸評した.自分の研究を広めるためというより,守るために攻撃的にならざるをえなかったのではないかと推測するが,研究を守り切ったのは1人の人間であったことに私は注目したい.このような例を最初に掲げたのは,肝臓移植が現在のような形になったのもStarzl TEとCalne RYを双壁とする強い意志と個性を持つ人間が核として初期に存在したからだと述べたかったからである.彼らが行った基礎から臨床にわたる広範囲な研究には圧倒される.決してつけ焼刃的なものではものは成就しないことを改めて思い知らされる.
しかしここでは彼らが行っている同所性肝移植ではなく,おそらく将来忘れ去られるであろう異所性肝移植について書き留めておきたい.
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