外科医のための局所解剖学序説・5
頸部の構造 5
佐々木 克典
1
Katsunori SASAKI
1
1山形大学医学部解剖学第一講座
pp.1587-1595
発行日 1996年12月20日
Published Date 1996/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902598
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解剖学実習で椎骨動脈の走行を始めから終わりまでたどることは少ない.起始は胸郭上口の奥であるが,その場所は狭く実際剖出しにくい.その後第6頸椎の横突孔に入り,つぎつぎと孔をくぐり抜けていくが,あえて横突孔を開けて観察することはしない.後頭下三角で第1頸椎の後弓にわずかに乗る椎体動脈を確認し実習は終わる.時間をずらして脳実習で脳底動脈に続く椎骨動脈の断端を見ることになる.このように椎骨動脈の知識は断片的であり不連続である.一見なじんでいるようで,実際はなじみの薄い血管である.
椎骨動脈はもともと肋間動脈と同じように背側動脈から規則正しく出たものが,頸椎の肋骨に相当する場所と横突起に相当する部位の間,すなわち横突孔の中で第1番目から第6番目が縦に吻合し,背側動脈との横のつながりを失ったものである.第7番目の背側動脈とのつながりはそのまま残り鎖骨下動脈からの起始になる.大後頭孔に入った動脈はちょうど前脊髄動脈のように1本になり脳底を走る.
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