外科医のための局所解剖学序説・21
腹部の構造 8
佐々木 克典
1
Katsunori SASAKI
1
1山形大学医学部解剖学第一講座
pp.459-468
発行日 1998年4月20日
Published Date 1998/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903156
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臓器移植が制度として確立するまでわが国では長い時間が費やされた.その理由はいろいろ挙げられるが,他人の死を前提とする治療に日本人は気質的に合わないためだったのではないかと私は思う.これを解消するためには今後の啓蒙が重要になるであろうが,このような素朴な気持を封じ込めることもできれば避けたい.つまりこの紆余曲折は他人の死を前提としない臓器置換にエネルギーを注ぐことを,われわれ日本人に求めていたのではないかと考える.臓器移植とともに臓器工学に多くの人,エネルギー,時間と経済的支援を行うことが今後日本の歩むべき道であるように思う.腹腔の構造の最後のエピソードに人工腎臓を取り上げる.
人工臓器に現実味を与えたのはオランダ生まれのKolff WJの情熱であったといっても過言ではない.「人工臓器に未来をみる」の中で進行する日本が生んだ著名な人工臓器研究者,能勢之彦とKolffとの対談は先駆者の情熱のほとばしるすばらしいものである.
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