膜の解剖からみた消化器一般外科手術・5
結腸癌根治術・解剖学的事項
金谷 誠一郎
1
1国立姫路病院・外科
pp.1597-1608
発行日 1996年12月20日
Published Date 1996/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902599
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はじめに
今回から癌に対する手術の解説を行う.まずはじめに,消化器癌の手術としては比較的わかりやすく,基本的ともいえる結腸癌を取り上げ,解剖学的事項の解説から行うこととする.
癌に対する根治術とは,原発病変の摘除以外に,周囲リンパ節の摘除・郭清がなされなければならない.本連載第1回(本誌1996年5月号)でも触れたとおり,リンパの流れはその領域の支配動脈に沿って中枢側(大動脈周囲)に向かっており,しかもそれらリンパ組織はすべて腹膜下筋膜の2葉に包まれた層に存在している.実際の手術では,原発病変とともに,これらのリンパ組織をできる限り膜(腹膜下筋膜)に包まれたまま,つまりその領域のリンパ組織を残存させることなく摘除する必要がある.したがって,癌の手術に際して知っておくべき重要な解剖学的事項は,腹膜下筋膜を中心とする膜の構造と,その内部での血管系・リンパ系の走行ということになる.
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