外科医のための局所解剖学序説・23
骨盤部の構造 2
佐々木 克典
1
Katsunori SASAKI
1
1山形大学医学部解剖学第一講座
pp.747-757
発行日 1998年6月20日
Published Date 1998/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903208
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外科を志した方ならHalstedという名前を一度は耳にしたことがあるはずである.Halsted WSは19世紀後半から20世紀初頭にかけてBaltimoreで活躍したオールマイティ,快刀乱麻を断つにふさわしい外科医で,その面目躍如たる様を端的に示すものとして掲げられるのが,彼が「New York Medical Journal」に寄せた2ページに満たない論文である.そこには3症例報告されており,最初の症例が食道切開による食道異物の摘出,2例目は膀胱結石の摘出,最後が頭蓋腔からの弾丸の摘除である.いずれも短い文で事も無げに書いているが,それらは耳鼻科,泌尿器科,脳外科の異なった領域を対象にしており,彼が名前を残したのがヘルニア根治術,乳房切除術,皮膚の形成・移植であることを考えると,実に守備範囲が広い.映像で活躍するような外科医の中の外科医を想像してしまうが,意外なことに実にシャイだったといわれている.コカインで局所麻酔の実験をやっているうちに,麻薬中毒になってしまい,立ち直るのにつらい経験もしている.完全には元に戻らなかったというが,しかし外科医として活躍するのはその後である.
ここでは上述の論文で骨盤に関係した膀胱について引用しておこう.患者は35歳の男性で,膀胱麻痺のため長年カテーテルを用いて排尿していた.ある日,カテーテルが途中で壊れ,膀胱の中に2〜3インチの部分が残ってしまった.
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