外科医のための局所解剖学序説・22
骨盤部の構造・1
佐々木 克典
1
Katsunori SASAKI
1
1山形大学医学部解剖学第一講座
pp.613-623
発行日 1998年5月20日
Published Date 1998/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407903182
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骨盤の体表解剖は骨を指標にできるため腹部より明確に説明できる.正常の状態で恥骨結合と仙骨の岬角とを結んだ線は水平面に対して60度を成す.骨盤のこの傾きを骨盤傾斜という.先ほどの線と弓状線を含む面は小骨盤腔,すなわち骨盤内臓の存在する空間の入り口に相当する.産婦人科領域では計測用にさまざまな線が引かれるが,それらとは関係なく,ここでは恥骨結合の上縁を通り水平面に平行な線を考えてみよう.傾斜しているが故にこの線は後方で仙骨と尾骨の境あるいは尾骨の下端を通り,小骨盤腔を上下に二分する.したがって,立位で正面から見た場合,恥骨結合の上縁より上では仙骨の大半を透視できる.この把握は重要だ.なぜなら骨盤に分布する血管,自律神経は仙骨を中心にして存在するからである.一方,尿で充満した膀胱や発達した子宮の頭・体部を除いて骨盤内臓は一般に下にある.極端な見方をすれば骨盤内臓とそれに分布する血管,神経の大元は分離して捉えることができ,その境が恥骨結合の上縁だということになる.上前腸骨棘と恥骨結節の間に張るのが外腹斜筋の腱膜が肥厚した鼠径靱帯である.両側の上前腸骨棘を結ぶ線の右から1/3の部位はランツの点として知られており,この場所に盲腸に入る虫垂が投影され,この線を含む水平な面に岬角が含まれる.両側の腸骨の頂点を結ぶ線は第4,5腰椎の間を通ることは常識であろう.
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