外科医のための局所解剖学序説・4
頸部の構造 4
佐々木 克典
1
1山形大学医学部解剖学第一講座
pp.1455-1464
発行日 1996年11月20日
Published Date 1996/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902574
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
甲状腺摘出の歴史は古く,痛ましい.J-L.ReverdinとE.T.Kocherが甲状腺の一部を残して取り除く手術方法にたどりつくまで,約2000年の間,屠殺行為と非難され続けた.その歴史的経過をたどると,甲状腺の解剖学的特徴や性質が浮かび上がってくる.
最初に人類が遭遇したのは,甲状腺摘出の際に生じるおびただしい出血であった.甲状腺の血管分布は外頸動脈と鎖骨下動脈の二重支配を受け,下甲状腺動脈は奥から上がってきて裏面に分布する.さらに,被膜直下で枝は細かく分かれ表層を這う.静脈の分布も豊富であり,いずれも内頸静脈,腕頭静脈に直接注ぎ込み,扱いにくいものである.J.Thorwaldは,出血を回避するための特殊な止血鉗子の開発と200回以上の結紮が必要だったと述べている.
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.