臨床外科交見室
完全皮下埋め込み型中心静脈カテーテルの使用経験
藤森 千尋
1
1国保京北病院外科
pp.1305
発行日 1996年10月20日
Published Date 1996/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902423
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癌治療法の発達には目覚ましいものがあるが,癌患者,とくに余命幾許くもない未期癌患者に対しては,QOLを考慮した治療が非常に重要である.治療を重視するあまり,患者が希望しないのに,病院に長期間拘束したりするのでは,QOLの面から好ましいことではない.たとえ治療を好まずに,残された生命が短くなろうとも,本人が納得いく余命が過ごせ,心静かに生活できるのならその方が良いと思う.未期癌患者が,残された日々を自分の思い通りの有意義な生活が送れるように,われわれ医師は考えるべきであり,告知しなかつた患者に対しても,死後に,周囲の者が納得のいく余命を過ごさせてあげられたと,満足できるようにせねばならない.
そのような事を考え,私は未期癌患者に,完全皮下埋め込み型中心静脈カテーテルを使用してきたが,満足出来る成果が得られている.カテーテルと接続された,皮下に埋め込んであるポートに針を刺入すれば,中心静脈栄養などの輸液が可能で,抜針すれば患者は入浴するなど,点滴から解放される.また,家族や患者に点滴方法などの教育をすれば,在宅治療が行え,携帯用輸液ポンプと接続すれば,遠方への旅行も可能である.
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