私の工夫—手術・処置・手順・23
腹腔鏡下胆嚢摘出時における胆嚢頸部の処理について
中川 国利
1
Kunitoshi NAKAGAWA
1
1仙台赤十字病院外科
pp.1015
発行日 1996年8月20日
Published Date 1996/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902371
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腹腔鏡下胆嚢摘出術は,胆嚢結石症に対する標準術式となりつつある.しかし一方で,手技の繁雑さが指摘され,さらに胆管損傷や出血などの合併症の発生率が従来の開腹手術よりやや高いとされている.そこでわれわれが行っている,より容易で安全な胆嚢頸部の処理法について紹介する.
把持鉗子にて胆嚢底部を横隔膜方向へ挙上し,Calot三角部の視野を展開する.次に他の鉗子で胆嚢頸部を把持し,右下方へ牽引して胆嚢管を伸展させる.高周波メスで胆嚢頸部の前面,後面および胆嚢管前面の漿膜を切開する.次にヘラ型剥離鉗子を用いて胆嚢頸部を全周性に剥離し,胆嚢管を胆嚢側から胆管側に向かって剥離する(図1).この際,胆嚢管の全長を十分に露出し,胆管・胆嚢管の合流部を必ず確認することが大切である.胆嚢管の胆管側に2個,胆嚢側に1個のクリップをかけ,その間を鋏で切る.次に胆嚢頸部を右下方へ牽引すると,胆嚢動静脈は胆嚢と肝十二指腸間膜との間で膜状に伸展された組織内に存在する.そこで胆嚢壁に沿ってクリップを2重にかけ,胆嚢側を鋏で切離する(図2).この際,胆嚢側からは少量の出血をきたすが,あえてクリップはかけない.これは出血により胆嚢動脈が存在していたことを確認すると共に,できるだけ右肝動脈や胆管より離してクリップをかけ,これら脈管の損傷を避ける理由による.
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