臨床外科交見室
医療の発展と高齢化社会
野川 辰彦
1
1長崎県済生会病院外科
pp.1014
発行日 1996年8月20日
Published Date 1996/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902370
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コンピューターなどの分野に限らず医学分野でも進歩や変化が急速に進んでおり,卒業後外科に入局した25年前に比べ,自動機械吻合器や鏡視下手術の手術器具の進歩による手術法の変化,栄養投与を可能にしたIVHやEDの発達による全身管理の発展,社会人口構成の変化による高齢者手術症例の増加は特に際立っている.
研修医の頃,高カロリー輸液による栄養投与法が導入され,計算した必要量になるよう多くのアンプルを切って高カロリー輸液を調整したもので敗血症や亜鉛欠乏など悲惨な経験をした.しかし,時とともに薬局から製薬会社へと製造所が移り改良製造されるようになってきたため,ほとんど合併症を起こさなくなり,多くの食事摂取困難な患者に福音をもたらすようになった.また入局の頃,消化管などほとんどは手縫いで,胃全摘後の食道空腸吻合や直腸切除後の低位前方切除など特に縫合に困難さを感じることが多く,消化器外科の最もいやな合併症である縫合不全も経験してきたが,自動機械吻合器が導入されるようになって狭くて縫合の困難な所でも容易に吻合ができるようになり,確実に操作することで縫合不全は皆無となってきている.3〜4年前より鏡視下手術があっという間に広がり適応疾患も多くなってきており,低侵襲で入院期間は短縮するということで患者に喜ばれている.
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