膜の解剖からみた消化器一般外科手術・3
鼠径ヘルニア根治術・内鼠径輪の処理
金谷 誠一郎
1
1国立姫路病院・外科
pp.903-911
発行日 1996年7月20日
Published Date 1996/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902351
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はじめに
今回から鼠径ヘルニアに対する手術手技に解説を加える.一見複雑な解剖を示す鼠径部であるが,前回説明したように,あくまでも腹壁の層構造は保たれたままである.実際の手術にあたっては,常に「今腹壁のどの層に入っているのか」を考えながら操作を進めることが重要である.
ヘルニア治療の原則はヘルニア門の閉鎖である.一般に鼠径ヘルニアはその脱出経路の違いによって,外(間接)鼠径ヘルニアと内(直接)鼠径ヘルニアに分類されており,ヘルニア門はそれぞれ内鼠径輪そのものか鼠径管後壁に位置している,したがって,外鼠径ヘルニアでは内鼠径輪の処理が,内鼠径ヘルニアでは鼠径管後壁の処理が手術の基本であり,本来は全く別の手術と考えることができる.そもそも精管や内精動静脈が通過するために開いた状態である内鼠径輪と,横筋筋膜によって完全に閉じている(へこみや欠損のない)はずの鼠径管後壁とでは,その露出や閉鎖に対して考え方や手技の実際に違いがあって当然であろう.そこでまず今回は内鼠径輪の処理を中心に解説を行うこととし,成人男性の外鼠径ヘルニアを例にとり手術の実際を説明する.
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