連載 My Operation—私のノウ・ハウ
成人の外鼠径ヘルニア根治手術
牧野 永城
1
1聖路迦国際病院
pp.85-90
発行日 1987年1月20日
Published Date 1987/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407209616
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●適応と手術
手術適応に関しては,成人の場合特に難しい問題はない.もはや自然治癒の可能性はほとんどなく,あるのは嵌頓の危険だけだから手術の禁忌となるような合併症がないかぎり,ヘルニアの存在が診断されたら,手術適応となる.高齢者,その他,リスクの高い患者でも,よほどのことがなければ,局所麻酔で手術できる.
外鼠径ヘルニアの原因は,背景に先天性の腹膜鞘状突起の開存があつて,そこに反復する腹圧上昇や加齢による組織の弾力性減退などの後天的要因が加わつておこるとされる.
著者の手術は,この疾患の背景にある腹膜鞘状突起の開存とその結果であるヘルニアサックの高位結紮切断と再発を防ぐための内鼠径輪縫縮に主眼をおく.女性の場合には子宮円索をヘルニアサックとともに切断して,内鼠径輪を完全に縫合閉鎖する.ヘルニアも長い年月をへたもの,巨大なもの,特にそれが老人などで組織の弾力性低下などが加わつていると思われる場合には,内鼠径輪の拡大とともに鼠径管後壁の脆弱化がみられることもあり,そのときは鼠径管後壁の補強を行う.その方法としては,Iliopubic tract repairを行つている.
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