膜の解剖からみた消化器一般外科手術・4
鼠径ヘルニア根治術・鼠径管後壁の処理
金谷 誠一郎
1
1国立姫路病院外科
pp.1322-1330
発行日 1996年10月20日
Published Date 1996/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407902429
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はじめに
外鼠径ヘルニアと内鼠径ヘルニアとは似て非なる病態であり,その違いを明確にしたうえで手術を行わなくてはならない.多くの手術書では,外鼠径ヘルニアの解説に重点が置かれ,その標準術式として,後壁補強を中心とした解説が行われている.一方,内鼠径ヘルニアに対しては,付け足しのように「後壁に対する処理が必要である」と書かれているだけのことが多い.これでは,どちらの手術も後壁に対する処理が手術の中心であって,その方針に大きな違いがないようにも解釈可能である.実際そういった部分を十分に理解しないまま手術を行っている初心者が少なくないように思われる.
しかし,前回も説明したように,ヘルニア治療の原則はヘルニア門の閉鎖である.したがって,内鼠径輪をヘルニア門とする外鼠径ヘルニアでは内鼠径輪の縫縮が,鼠径管後壁にヘルニア門が存在する内鼠径ヘルニアでは鼠径管後壁の処理が手術の基本でなくてはならない.
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