鴨川便り・5
壁の取り外し
牧野 永城
1
1亀田総合病院診療統括
pp.612-613
発行日 1994年5月20日
Published Date 1994/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407901545
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各診療科が割拠しがちなわが国の病院で,その壁を崩すのに役立ついくつかの手法がある.
その1つに,1,000床以上というような大規模な病院でさえなければ,病棟を科別に編成せずに混合病棟とする方法がある.しかし,一口にそうは言っても混合できない事情の科もある.小児科,産科,精神科などである.産婦を病人と一緒にしてはならぬのはいうまでもないが,婦人科の患者は一般外科系病棟で扱うことができる.小児科も別にはするが,その中で外科系,内科系などと分けない.これらの科を除いたものはすべて一括して,内科系外科系病棟とか一般病棟と呼んで科の区別をしない.この方法はアメリカではむしろ一般的である.しかし,このようなシステムに慣れていない日本の医師達からはよく苦情がでる.領域が設定されている方が自分にとって何かと便利で自由がきくからである.この場合,「自分にとって」が「病院にとって」に優先している.他方,慣れた者にとってはさして不自由なものではない.日本の大学の習慣から抜け出すには多少の洗脳がいる.しかしまあ,そうは言っても,科による特殊性はあるのでそのための柔軟な対処を忘れぬようにする.例えば,整形外科はいろいろ大きな器材を組んだり崩したりして使うものだから,器材を病院中持ち運びしなくてもよいように,患者もなるべくある一角にまとめて配置したほうが機能的である.
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