とびら
壁を越えろ
千住 秀明
1
1長崎大学大学院医歯薬学総合研究科リハビリテーション科学講座
pp.89
発行日 2014年2月15日
Published Date 2014/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551106542
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日本の理学療法士教育が開始された当時は,専門職の教員は外国人講師によって占められていた.日本語ができない講師と英語のできない学生が,日本語の基礎医学と洋書の専門書を教科書に理学療法学を学んだ.筆者もその学生の一人である.学んだのは理学療法の知識・技術と「日本の理学療法の礎を築く大志」であった.
その志を学んだ学生たちの夢は,「理学療法士教育を4年制大学で行うこと」であった.ここ4半世紀に,大学での教育は金沢大学医療技術短期大学部の開学に始まり,広島大学の4年制大学教育の開始,大学院修士,博士課程へと一歩一歩前進してきたが,ここまでの道のりは順風満帆ではなかった.しかし,今では多くの諸先輩方の努力で当初の目標を超えるまでに理学療法は成熟した.理学療法士による理学療法士のための教育が実現し,理学療法士が自ら基礎医学から臨床医学まで研究できる環境が整いつつある.さらに理学療法は,「障害がある者に対して,主として基本動作能力の……」と謳う法律も拡大解釈され,予防や健康増進事業にもその活動の場を広げている.この業務拡大は,国民のニーズと理学療法士自らの努力,そして患者団体や医師をはじめ多くの関連職種の方々のご尽力により獲得できたものである.
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