明日の検査技師に望む
検査室の壁を破れ
臼井 敏明
1,2
1長崎大学医学部臨床検査医学教室
2長崎大学医学部附属病院検査部
pp.231
発行日 1990年3月1日
Published Date 1990/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900064
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明日の検査技術を予測し,これに従って企画を立てて検査技師を指導していくのが,検査部長の職務であろう.しかし実際には進歩の速い今日の社会においては,明日を予測することははなはだ困難である.今日の多くの臨床検査室ではコンピューターが設置され,日常業務に広く取り入れられている.今から11年前,私が鳥取大学から長崎大学へ転勤した当時,紙テープパンチ処理のミニコンを1台担いで転勤したときには,長崎大学附属病院にはコンピューターが1台も存在しなかった.3年を経て,検査部に汎用コンピューターを導入したのは,おそらく日本で初めてであろう.しかし,その時点では漢字プリンターは利用できなかった.現在のようにパソコンが広く普及しだしたのは,ここ5年のことである.いかに将来を見通すことが難しいかの一例である.
このような現象は何も現在だけでなく,過去から同じことが繰り返されている.三十数年前に私が内科に入局した頃は,心電計や脳波計がようやく臨床に用いられるようになった時代である.そのとき,これからは電気の知識のない医者は生活できないであろうとささやかれていた.幸い私はわずかながら電気の知識があったので,他の医師からうらやましがられた.しかし現在30年以上経過しても,電気を知らない医者が十分に存在していけるどころか,電気に詳しい医師は変わり者扱いされる.検査室に自動分析器が導入されたときも,機械知識のない検査技師はいらないとまで言われた.
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