特集 外科患者・薬物療法マニュアル
Ⅴ.併存疾患をもつ外科患者の薬物療法
3.躁うつ病(感情障害)
山脇 成人
1
,
藤川 徳美
1
1広島大学医学部神経精神科
pp.152-153
発行日 1992年10月30日
Published Date 1992/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900976
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躁うつ病は,感情障害とも呼ばれ,感情と欲動の障害を主徴とする精神障害であり,中枢神経系における神経伝達物質の情報伝達機構の異常が病因として考えられている.躁状態またはうつ状態の病相期を1回あるいは2回以上繰り返すが,各病相期のあいだの寛解期にはほぼ正常な状態に回復するのが特徴である.病型には躁病相,うつ病相の一方のみだけをもつ単極型と,両方をもつ双極型がある.
うつ状態は抑うつ気分,意欲の減退,思考制止,不安焦燥感などに食欲低下,不眠などの症状を伴い,精神神経両面の活力低下を来す.症状が強まると思考内容は次第に罪業妄想や心気妄想を伴うようになり,食欲減退から栄養状態も不良になる.また,自殺念慮が出現することも特徴で,うつ状態患者の自殺発動について常に注意を払う必要がある.稀に昏迷状態を呈し,意識が清明なのに表出や行動など意志発動がまったく行われなくなる状態を呈することもある.病因としては脳内のノルアドレナリンやセロトニンの情報伝達機構の異常が関与しているとされている.治療薬としては,シナプスにおけるこれらの神経伝達物質の情報伝達を正常化させる三環系,四環系抗うつ薬や,スルピリド,抗不安薬,睡眠薬などが用いられる.
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