特集 術前・術後管理 '91
A.術前評価・準備・処置
術前呼吸訓練法
山崎 史朗
1
1東邦大学医学部胸部心臓血管外科
pp.16-17
発行日 1991年10月30日
Published Date 1991/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900540
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■目的と意義■
最近の社会の高齢化と麻酔・外科手術の進歩発達により,以前では考えられなかった年齢の人でも,かなり安全に手術を受けられるようになってきた.また,高齢になってから各臓器の悪性腫瘍,循環器疾患などに罹患した場合,ある程度のリスクを承知のうえで外科手術に踏み切らざるを得ない場面に日常臨床上しばしば遭遇する.たとえ術中の麻酔,外科手技には問題がなくても,手術侵襲そのものが種々のかたちで術後における全身への負荷となり,各種の術後合併症を発生させる.なかでも,術後肺合併症は最も頻度が高く重要なものとされている.
術前呼吸訓練法は,この術後肺合併症を術前から予防することを目的としたものである.高齢になると,もともと人は加齢現象によって肺気腫の傾向を持つようになり,それに長年月の喫煙習慣とか汚染大気への曝露が重なると,肺組織の変性,破壊はますます加速されることになる.高齢者は言うに及ばず,重喫煙者,慢性気管支炎患者などが手術を受ける場合にも,術前準備として呼吸訓練は特に必要である.また,一般外科領域においても,以前から特に上腹部手術後に肺合併症が発生しやすいとされており,その頻度は6〜76%と報告されている1).そして,術前の肺機能にまったく問題のない患者でも,かかる手術を受けようとする場合に,術前呼吸訓練の意義は大いにあるとされている.
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