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特集 急性腹症の近辺—他科からのアドバイス
泌尿器系疾患による急性腹症
Acute abdomen in urological diseases
富樫 正樹
1
Masaki TOGASHI
1
1北海道大学医学部泌尿器科
pp.165-171
発行日 1991年2月20日
Published Date 1991/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900371
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泌尿器系疾患による急性腹症ないしはその類似疾患は意外と多く,急性腹症では常にその存在を念頭におかなければならない.一般的に,泌尿器系疾患による腹痛は疼痛の部位,放散の方向など臓器に特有な性質があるため,注意深い病歴の聴取や診察を行えば障害臓器を推測することが可能である.さらに,尿所見の異常を伴っていれば他臓器疾患との判別も容易となる.
日常診療上最も頻度の高い疾患として尿路結石症がある.尿路結石症では特有な疝痛発作とともに血尿の存在が大切な所見で,X線検査で結石陰影が確認されれば診断は容易である.尿路結石の大部分は緊急手術の適応とならず,保存的療法で経過をみてよい.一方,腎や尿管,膀胱,睾丸の損傷では障害が高度の場合には緊急手術が必要で,手術の時期を誤ると直接生命や臓器に危険がおよぶため,迅速かつ適切な判断・処置が必要である.
診断上,尿所見,腎・膀胱部単純撮影,静脈性腎盂撮影(IVP)は貴重な所見を提供してくれる大事な基本的検査であるが,最近ではCTで詳細な病態をとらえられるために必須な検査となってきている.高度の腎外傷,腹膜内膀胱破裂,精索捻転症,睾丸破裂の診断がつけば,あるいはそれらが強く疑われる場合には躊躇なく手術療法へ移るべきである.
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