今月の主題 最近の老人病—臨床とその特異性
老人における非定型的徴候
急性腹症
佐分利 六郎
1
1同愛記念病院
pp.2058-2059
発行日 1973年12月10日
Published Date 1973/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205217
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命題は急性腹症しかも老人の医療であり,編集者の意図は教科書的でないようにとのことである.急性腹症の記述は既に多く繰り返されているので,統計的な数字は避けて主として臨床的に述べてみたい.まず老人という定義であるが,外科学会でも65,70,75歳といろいろの説があるが,私見を述べると手術を問題とすれば70歳以上の患者には特別な注意が必要であり,いわゆる老人という考えからいうと60を過ぎるといろいろの変化が現われてくる人が多いと思っている.つまり身体のどこかに老化現象,代謝障害によると考えられる欠点があり,局所の症状を示す徴候が若い入と異なってきたり,わずかの合併症に対しても抵抗力が低下しているなどのことがみられる.また急性腹症という便利な言葉はいろいろの定義があろうが,一般には「相当著明な腹痛を主訴として来院し,一応緊急手術を考えるべき状態で,簡単に鑑別診断を下し得ないような症候群」を示すものであって,担当医の知識および技術によりあるいは開腹し,あるいは経過を観察して診断が決定するものといえよう.したがってかなり多くの疾患が含まれるが,一応手術適応を主として列記しよう.
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