特集 保存的治療の適応と限界—外科から,内科から
前立腺肥大症
コメント
町田 豊平
1
1東京慈恵会医科大学泌尿器科
pp.1688-1689
発行日 1990年10月30日
Published Date 1990/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900305
- 有料閲覧
- 文献概要
前立腺肥大症に対する治療法の変遷は,特に今世紀になって著しい.専らカテーテルによる導尿法によって尿閉をしのいできた旧い時代から,今世紀になると開腹摘除する手術法が確立し,さらに1930年代からは経尿道的な前立腺切除術が急速に普及しはじめ今日に至っている.こうした手術法の普及とその治療成績の向上は,前立腺肥大症の基本治療がすべて手術的治療であるという考え方を一般化させた.しかし,最近前立腺肥大症の発症機序が次第に解明されるに至り,さらに肥大症が良性疾患であるという再認識から,保存的治療法としての薬物療法が改めて見直されてきている.現今の前立腺肥大症に対する治療法をまとめると別表のようになる.
前立腺肥大症に対する保存的治療には,薬物治療と導尿法(排尿管理)があるが,一般的には薬物療法が中心である.ただ薬物療法には有効性の確証もなく多くの薬剤が古い時代から今日まで使用されてきたが,客観的に縮小効果のみられるものは,最近のアンチアンドロジェン剤のみである.それも平均縮小率は30%以下であり,かつ長期の服用が必要となる,そのため,前立腺肥大症の治療剤としてはなお限界が存在する.アンチアンドロジェン剤以外の薬物でもその効果がありとされるのは,前立腺に対する直接効果というよりも,全身的,心因的あるいは症状に対するものであり,肥大症の症状の変動も自覚症に影響を与えていると思う.
Copyright © 1990, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.