特集 保存的治療の適応と限界—外科から,内科から
心筋梗塞
外科から
細田 泰之
1
1順天堂大学医学部胸部外科
pp.1589-1593
発行日 1990年10月30日
Published Date 1990/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900279
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急性心筋梗塞に対する緊急ACバイパス術の施行および適応に関しては種々論議のあるところである.その理由は,急性心筋梗塞という刻々と変化するダイナミックな状況においては,侵襲的な血行再建が時間的制約のために必ずしも壊死に陥りつつある心筋を救い得ず,むしろ開心術という大きな侵襲により心機能の低下をもたらしたり,更にタイミングを誤所謂と壊死領域における再灌流が出血性梗塞を生じ,所謂reper-fusion injuryによる心筋障害により梗塞領域のむしろ拡大悪化をもたらす危険があるためである1,2).一般に症状の発現より6時間以内に再灌流が達成されればよいと経験上言われており3),実験的にも梗塞発生後4〜8時間以内に再灌流が起こるならば良い結果が得られると言われている4).しかし,実際には個々の症例において正確に梗塞の発現時間を知ることは困難であり,一概に6時間といっても閉塞冠動脈領域における側副血行の状況は千差万別であり,決して一様なものではない.更に突然予告なく心筋梗塞が発生することが多いが,患者が自宅なり仕事場より循環器専門医の所に運ばれ心臓カテーテル検査を受けて確定診断を得てから,心臓外科チームにより外科的に冠血行再建が達成されるまでの過程は必ずしもスムースには行かない.以上のような理由などにより,急性心筋梗塞に対する緊急ACバイパス術は手術の危険も高く,成績が悪く広く一般化されなかった.
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