特集 外科患者・薬物療法マニュアル
Ⅴ.併存疾患をもつ外科患者の薬物療法
6.狭心症
笹栗 志朗
1
,
細田 泰之
1
1順天堂大学医学部胸部外科
pp.158-160
発行日 1992年10月30日
Published Date 1992/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900979
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冠動脈疾患を有する患者の一般外科手術は,かりに無症候性であっても手術を契機に症状が顕在化し,周術期心筋梗塞を招くことがあり,術前の十分な検討と周術期を通してのintensive careが必要である.
狭心症は,心筋酸素需要と供給のアンバランスにより生じるため,このバランスの維持を図ることが薬物療法の最大の目的である.心筋酸素需要は,主に心筋壁応力,収縮力,心拍数に規定されるため,酸素需要の減少目的にて静脈,動脈血管拡張薬を用い,前負荷,後負荷を軽減し壁応力を低下させ,βブロッカーやカルシウム拮抗薬などを用いて収縮力,心拍数を減少させる.一方,酸素供給は,冠血流量と動脈血酸素飽和度に比例し,心拍数の増加は逆に冠動脈充満時間を短縮させるために,酸素供給を減少させる.亜硝酸薬は,直接の冠拡張作用のほかに前負荷を軽減させることで左室拡張末期圧を低下させ,冠血流を増大させる作用がある.また,酸素投与,貧血の改善は酸素供給を増加させる意味で重要である(表1).
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