書評
—窪田忠夫(著)—急性腹症の診断レシピ—病歴・身体所見・CT
池上 徹則
1
1倉敷中央病院救命救急センター救急科
pp.638
発行日 2024年6月20日
Published Date 2024/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407214554
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窪田忠夫先生の新刊は相変わらず刺激的で,読み進めるうちに何度も納得してうなずきました.まず冒頭の「序」では,「腹痛の原因を検索するのにCTがとても有用だから」「病歴聴取と身体所見は診断しようとして行われていない」という記述が目に留まります.これはきっと,指導する立場の先生方が常日ごろからお感じになっていることでしょう.
腹部診療は,解剖が複雑な上にさまざまな主訴を時間軸と掛け合わせて考える必要があり,初学者に限らず苦手にしている人は多いと思います.そのような中,著者は腹痛を,上腹部痛,下腹部痛,腹部全般痛の3つのカテゴリーに分けて考えることを提案します.そして重要な鑑別疾患を列挙する一方で,「鑑別に挙げなくてもよい」と言い切る疾患に関しては,「どうしてそうなのか」を丁寧に解説していきます.例えば,多くの類書では「主訴:腹痛」で鑑別疾患を挙げる際に,本当に重要な「主訴」と,腹痛はあるが「主訴」とまでは言えないものが混在している場合があります.本書では,肝膿瘍を例に挙げて,この点を詳しく説明しているのですが,非常に納得しやすいです.その後,年齢,性別,基礎疾患を軸に話が進みますが,それは熟練した外科医がベッドサイドで所見をひもといて解説するような丁寧さであり,数々の至言にあふれています.
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