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肝の亜区域切除術(subsegmentectomy)は,Healey & Schroyが1953年に出版した論文で定義した肝区域(外側区域,内側区域,前区域,後区域)より小さな区域の切除が困難と考えられていた1980年代初頭,当時国立がんセンター病院に所属していた幕内がCouinaudの8区域およびそれ以下の区域を,術中超音波(intraoperative ultrasonography:IOUS)や門脈枝の染色法を用いて切除した方法が始まりである1).例えば,CouinaudのS8領域を染色し,過不足なく切除する術式を肝S8の亜区域切除と定義した.その後,肝臓外科医の中で,lobectomy(葉切除)とhemihepatectomy(半肝切除)の異同や,Couinaudの定義したS1〜S8(9)の第3次分枝の区域と,前区域や後区域などの第2次分枝の区域の異同を整理する必要性が生じた.そこで,オーストラリアのBrisbaneにおいて,肝区域を呼称する用語を統一させるための国際会議「Brisbane 2000」が開かれた2).Couinaudの9つの3次分枝区域はsegment,前区域や後区域などの2次分枝区域はsectionまたはsectorと定義された.したがって,この会議以降は,segmentectomyとはCouinaudの区域切除を指すことになったのである.一方,subsegmentectomyの切除範囲はBrisbane 2000では定義されていない.一般に「肝系統的亜区域切除」といえば,CouinaudのS1〜S8やそれに満たない小区域を門脈枝の染色領域やグリソンを遮断後の阻血領域を切除する方法で,解剖学的切除(anatomical resection)とほぼ同義として使われていると筆者らは理解している.本稿では,以降,一般には肝亜区域切除と認識されている解剖学的な肝区域切除の方法について詳述する.
解剖学的区域切除の適応となるのは,経門脈的に肝内転移を起こすと考えられている肝細胞癌や,肝区域の系統的切除が必要とされる肝内胆管癌や転移性肝腫瘍などの腺癌病変である.切除する区域の範囲は,腫瘍の大きさ,位置,脈管への浸潤の有無などの腫瘍条件と,インドシアニングリーン(ICG)検査から予測される安全な肝切除許容量から決定する.
*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年10月末まで)。
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