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あとがき
橋口 陽二郎
pp.1012
発行日 2020年8月20日
Published Date 2020/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407213036
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新型コロナウイルス感染症による非常事態宣言がようやく解除されましたが,ほっとする間もなく「東京アラート」が発令され,感染第2波に警戒しなければならない毎日です.人類を危機に陥れるようなパンデミックは,すでに過去のものと思われていました.しかし,考えてみれば,これだけ医学が発達しても,実際に倒したと言える感染症は1980年にWHOが根絶宣言を出した天然痘だけということに愕然とします.
本邦での感染状況は諸外国に比較して軽く,不幸中の幸いとしか言いようがありません.全国的なBCG接種が幸いしているかもしれないとの意見があり,何十年かぶりにスタンプのように残る接種跡を探しました.1回目のBCGではツベルクリン反応が弱く,両上腕に計2回の接種を受けたことを思い出します.そういえば,ニューヨークに留学した際に,娘が幼稚園入園に際してツベルクリン反応が陽性であるとの指摘を受け,入園を拒否されました.本邦で全国的に一律にBCGが行われていることを必死で説明してようやく納得してもらいました.思えば,ニューヨーク州の死者数は実に3万人を突破しています.ついでに肩をさがすと,根絶に伴い,すでに行われなくなって久しい種痘の跡もくっきり残っています.感染症の予防に画期的な足跡を残した先達に思いを馳せるとともに,自分の体にくっきりと刻まれた感染症予防のための傷跡に「お陰様でまだ生きてます」と,感謝の気持ちが湧いてきました.
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