--------------------
あとがき
橋口 陽二郎
pp.360
発行日 2024年3月20日
Published Date 2024/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407214485
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
患者さんとのトラブルは,医師にとって大きなストレスとなるばかりでなく,医療訴訟などに発展すれば,時間的,精神的,時として社会的に強烈なダメージを被る.外科の先生が定年退職されるときのスピーチでよく聞かれるのが「外科医人生を大過なく過ごせたのは何よりもよかった」とのコメントであるが,この言葉の指す「大過」のなかには,「裁判沙汰」が含まれている場合が多いと思われる.
今年度より病院長職に就いて改めて痛感しているのは,裁判沙汰になる・ならないを問わず,患者さんと医療者の間のトラブルが依然として非常に多いことである.そして,近年目立つ要因は,①患者・家族のクレームの増加と②医師の対応力不足である.患者・家族が医療過誤とは全く別次元の事項でも執拗にクレームをつけてくるような傾向は年を追って悪化する一方である.レストランやホテルのフロントで怒鳴っているような巷でよく見かける光景が,医療機関にも流れ込んできている.再三担当医が説明してお勧めしても,頑として聞き入れなかった入院拒否や手術拒否の患者さんから,その後の経過が悪かった場合にクレームを受けることはたびたび経験するところである.主治医がカルテに状況を記載するばかりでなく,「医療行為の不同意確認書」に署名してもらわなければ,水掛け論になりかねない時代になってきた.
Copyright © 2024, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.