FOCUS
体動を捉えるモーションセンサーによる腹腔鏡手術の上達度計測
松下 宗一郎
1
,
八木 浩一
2
,
愛甲 丞
2
,
瀬戸 泰之
2
Soichiro MATSUSHITA
1
1東京工科大学コンピュータサイエンス学部
2東京大学大学院医学系研究科消化管外科
pp.495-499
発行日 2020年4月20日
Published Date 2020/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407212917
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はじめに
外科手術においては,患者への侵襲性が低く,術後の速やかな回復が期待できる内視鏡下手術の手法が近年急速に広まりつつあるが,技量習得は切開手術と比して困難である.このため,腹腔鏡手術についてはドライボックスと呼ばれる機材により,施術者の両手にて把持される内視鏡手術鉗子を操作する縫合・結紮といった技量のトレーニングが行われてきた.ここでは,施術操作に要したタスク時間と,縫合・結紮の出来栄えに加え,施術部位を撮影・投影しているビデオ動画の目視評価を組み合わせることで,技量の評価が行われている.しかしながら,ビデオによる技量評価では正確な判定を下すことのできる評価者が必要であることに加え,ビデオの再生自体に時間がかかることから,技量トレーニングの効果的な実施という視点からは問題が生じている.さらには,手術鉗子操作における施術者の前腕姿勢や力の入れ方といった,内視鏡画像では捉えることが難しい運動技法については,熟練者による指導といった手法に頼らざるをえない.このため,手術鉗子にモーションセンサーを設置し,速度や加速度といった運動信号による施術技量評価が試みられているものの,多様な手術器具への対応やセンサーの取り付け方法といった視点から,技量トレーニングの場において手軽に利用することは困難である1).
そこで本稿では,施術者の手首運動を正確に捉えるモーションセンサー機器により,腹腔鏡手術における縫合・結紮技量の客観的な数値評価を行う研究開発事例を紹介するとともに,その中で得られた施術技量に関する知見について概説する.
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