増刊号 すぐに使える周術期管理マニュアル
Ⅳ章 術後合併症とその管理
A 重点術後合併症の管理ポイント
縫合不全(直腸癌低位前方切除術)
神藤 英二
1
,
永田 健
1
,
梶原 由規
1
,
岡本 耕一
1
,
上野 秀樹
1
Eiji SHINTO
1
1防衛医科大学校外科学講座
pp.225-229
発行日 2019年10月22日
Published Date 2019/10/22
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407212701
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症状
低位前方切除術における吻合部の縫合不全は重大な合併症の1つであり,時に重篤化し緊急の対応を迫られる.縫合不全とは,再建腸管同士の壁連続性の破綻によって,腸管内腔が腸管外へ異常に交通した状況と定義される.吻合機器や手技に起因する場合は比較的早期の発症となる.水様性下痢などの物理的刺激が原因となることも多く,発症は排便のタイミングと一致する.血流不全や創傷治癒過程の問題で発症する場合には,術後1週間程度を経て発症することもある.一方,3週以降に発症する遅発性縫合不全は稀であり,その頻度を1.3%と報告する検討もある1).
縫合不全の初期症状としては,発熱と腹痛が最も一般的である.ドレーンから排出される汚染された腹水,ガス,便,膿を契機に診断されることが多い.周囲臓器との間に瘻孔を形成することもあることから,創部や腟についても排出内容に注意する.肛門からの排膿も縫合不全を疑う所見である.
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