増刊号 すぐに使える周術期管理マニュアル
Ⅱ章 併存症をもつ患者の評価とその術前・術後管理
その他
血液凝固異常(先天性)
川杉 和夫
1
Kazuo KAWASUGI
1
1帝京大学医学部血液内科
pp.90-92
発行日 2019年10月22日
Published Date 2019/10/22
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407212668
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血液凝固異常のおもな疾患
先天性の血液凝固異常(血栓性素因)とは,生理的な凝固制御因子であるアンチトロンビン(antithrombin:AT),プロテインC(protein C:PC),プロテインS(protein S:PS)の遺伝子に異常が生じ,凝固を抑制するこれらの因子活性が低下して,血栓症を発症しやすい状態にあることを意味する.さらに,先天性血栓性素因の原因には,上記のほかにヘパリンコファクターⅡ欠乏症,プラスミノゲン異常症などの疾患も存在する.しかし,それら疾患は頻度的に非常に稀であり,また,病態として必ずしも確立されていない疾患も含まれており,先天性血栓性素因といえば,AT欠乏症,PC欠乏症,PS欠乏症を指すのが一般的である.
一方欧米では,凝固第Ⅴ因子ライデン変異1)(Factor Ⅴ Leiden;第Ⅴ因子506のArgがGlnに置換)が主要な先天性血栓性素因であり,白人の血栓症患者の10〜20%にも及んでいる.しかし,いまだに日本人においてはFactor Ⅴ Leidenが検出されておらず,本邦の患者に限れば,この疾患を現時点では考慮しなくてよい.
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