今月の臨床 妊産婦と薬物治療─EBM時代に対応した必須知識
Ⅱ.妊娠中の各種疾患と薬物治療
2.妊娠合併症の治療と注意点
[血液・自己免疫疾患] 先天性血液凝固異常症
伊原 由幸
1
1神戸市立中央市民病院産婦人科
pp.575-577
発行日 2005年4月10日
Published Date 2005/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100278
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1 診療の概要
先天性の血液凝固系の異常にはさまざまな疾患が知られている.大きくは,先天性に出血傾向を示すものと血栓傾向を示すものに分けられる.出血傾向を示すものでは,凝固因子が先天性に低下,欠損しており,妊娠中および分娩時の多量出血が重大な問題となる.
一方,先天性に血栓傾向を示すものでは,凝固を阻害する調整蛋白が欠損しているものが多い.妊娠中は,これに生理的な過凝固傾向が加わり,しばしば深部静脈血栓症を起こす.特に分娩時には血栓症から続発する肺塞栓症など重要臓器の塞栓症が致命的となることもある.Antithrombin III(AT III)欠損症,protein C欠損症,protein S欠損症などが知られている.妊娠中の治療はヘパリン療法が中心となり,ATIII欠損症ではATIII製剤も投与される.またハイリスク例では,肺塞栓症の予防のため分娩時に下大静脈フィルターが一時的に留置されることもある.詳細は本特集の他稿に譲る.
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.