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臨床研究の現況
臨床研究とは,人を対象として行われる医学研究のことであり,疾病の予防や診断,治療方法の開発や改善,さらには疾病の原因や病態の解明などを通した,患者の生活の質の向上を目的としている.医学・医療の進歩のためには,エビデンスを創る臨床研究は大きな役割を担っており,特に昨今の科学技術の急速な進展に伴い,新たな診断や治療技術の安全性,有効性などを的確かつ公正に検証するために,臨床研究の重要性は一段と増してきている.臨床研究は,被験者に人為的介入を行わない「観察研究」と人為的介入を行う「介入研究(臨床試験)」に分けられ,それぞれ「疫学研究に関する倫理指針」と「臨床研究に関する倫理指針」が定められていたが,その対象となる研究の多様化により,平成26年12月22日,「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」として統合された.これは,研究をめぐる不正事案が発生したことなどを踏まえての改訂でもあり,臨床研究は指針を遵守することで研究成果の信頼性を確保し,国民の理解を得つつ進めていくことが肝要である.
臨床研究には多様な種類の研究が包含されており,医療現場におけるエビデンスを確立するための研究から新たな医薬品や診断技術の安全性,有効性を科学的に検証する臨床試験まで,それぞれの特徴を知ったうえで目的に合った研究デザインを選択しなければならならない.臨床試験においても海外と本邦ではその制度が異なっており,本邦では治療や診断の介入の効果を評価する臨床試験のなかで,製造販売の承認を得るために製薬企業などが行う臨床試験は,薬事法に基づく「治験」としてより高い質が求められている.一方,海外では治験という概念はなく,例えば米国ではすべての臨床研究が大学,研究機関,ベンチャー,製薬企業などの申請元にかかわらず,また製造販売の承認を目的とするか否かにかかわらず,食品医薬品庁(Food and Drug Administration:FDA)に,同じIND(Investigational New Drug)申請が必要とされている.これは,国民の健康の保護を第一の目標としていることに由来する.最近では,本邦でも薬事法の改正によって,企業が開発を行わない場合,医師が中心となって医師主導治験を進めることで承認申請も可能となっており,さらに臨床研究全体の質を治験なみに向上させるために,大学や国立機関などにおけるアカデミック臨床研究機関(Academic Research Organization:ARO)機能の整備が進んでいる.
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