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今回の特集は,「大腸癌腹腔鏡手術の新展開—Reduced port surgeryからロボット手術まで」です.本邦でロボット手術が導入されて以来,すでに十年以上が経過しています.現在のロボット手術は,da Vinci Surgical Systemにより行われていますが,da Vinci Surgical Systemも年代ごとに変遷を遂げてきました.そして,手術に大きな変化ももたらしてきました.現在の直腸癌に対するロボット手術の一つの問題点として,アームの干渉があります.骨盤内の操作を行う際に,体外のアームが干渉して鉗子の動きに支障をきたすことが問題となっています.これを回避するために,ポートサイトをどこに決定するかが重要なポイントとなっています.あるいは,da Vinci本体をどこから,あるいはどの方向からドッキングするかが重要なポイントとなっています.こうした取り組みを介して,できるだけスムースな作業ができるような動作環境を作っているのが現状です.このような状況の中,先日,最新のシステムであるda Vinci Xiを操作する機会を得ました.まだ日本に導入されたばかりのシステムですが,その改良点には驚きました.これまでのアームに比べてアームが細くなったり,アームの可動範囲が広くなったり,多くの改良点が見られました.そして狭い骨盤内の操作をしようとする時のアームの干渉が,以前に比べて非常に少なくなっているということも体感しました.技術の革新というものが,実際の手術に与える影響がいかに大きいかを改めて認識しました.従来の器械で苦労して築き上げてきた様々な工夫あるいは取り組みが,ある意味では必要なくなってしまいます.ユーザーから見れば便利な方が良いわけですが,苦労して築き上げたノウハウの意味がなくなるというのは寂しい話でもあります.でも器械が広く普及していくためには必要不可欠なことでしょう.デバイスの改良というものが,いかに大きな意味を持つかということをしみじみと感じた次第です.
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