FOCUS
外科医労働環境の現況と今後の展望
富永 隆治
1
Ryuji TOMINAGA
1
1九州大学大学院医学研究院循環器外科学
pp.750-755
発行日 2015年6月20日
Published Date 2015/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210786
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はじめに
国民皆保険制度を始め,日本の優れた医療制度によって,日本国民は高度の医療を最小の自己負担で享受している.一方,対象患者の高齢化,疾病の複雑化,患者の権利意識の変化などが重なり,医療現場の仕事量は年々増大する傾向にある.このため医療従事者の労働環境は,劣悪の一歩を辿っている.特に外科は,一人前の術者になるまでの研修期間が長い,訴訟などのリスクが高い,高度の手術手技に対する評価を含め仕事に対する報酬が低い,緊急の呼び出しを含め労働時間が長い,などの理由から敬遠される傾向にある.全体の医師数が漸増する中で産科とともに外科医は減少しているのである.医師数の減少は臨床現場の過重労働を加速させ,さらに若手医師の新規参入を減少させるという負のスパイラルに陥っている.日本の高いレベルの外科医療を維持するために,外科医の労働環境改善は急務といえる.筆者は日本外科学会労働環境改善委員会担当理事として,これまで5年間活動してきた.アンケート調査などで会員諸兄には多大のご協力をいただいた.本稿では,その調査結果と委員会活動の一端を紹介する.
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