今月の主題 糖尿病診療の実際
糖尿病治療の現況と今後の展望
堀内 光
1
Akira Horiuchi
1
1東京都済生会中央病院
pp.980-981
発行日 1984年6月10日
Published Date 1984/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402219056
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治療の目的とその根本方針
糖尿病治療の目的は糖尿病患者の病的状態を軽減,できればこれを解消し,健康状態に近づけ,これを維持することである.糖尿病の病態は体内インスリン作用の不足に基づくと考えられ,治療の根本方針は体内インスリン作用の不足を解消することである.体内インスリン作用の不足をおこすには多くの因子が関係している.膵B細胞がある原因で破壊されてインスリン分泌のないものは,インスリン依存型糖尿病(Ⅰ型糖尿病)で,膵B細胞の障害はあるが,インスリン分泌機能はいくらか保たれているものをインスリン非依存型糖尿病(Ⅱ型糖尿病)という.臨床的にはⅡ型と判断される症例が大部分であるが,この区別は必ずしも明らかではない.両型ともその病因は単一ではない.糖尿病の成因は多様で,糖尿病を一つの症候群とするものもある.糖尿病の個々の症例の病因を明らかにすることは困難で,病因に応じた治療は行われていない.その病因から生じたインスリン作用不足の病態を知り,それに応じてインスリン作用不足を軽減しようというのが現在の治療方針である.膵B細胞からインスリンがほとんど分泌されていないものには外来性のインスリン注射が絶対に必要であるし,内因性インスリン作用の保たれているものでは,その作用をできるだけ発揮させ,これを抑制しないという方針をとる.
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